理化学研究所
光量子工学研究センター
時空間エンジニアリング研究チーム
チームディレクター
香取 秀俊(かとり ひでとし)先生
1988年東京大学工学部物理工学科卒業。1999年、東京大学工学部・助教授。2010年より同教授。2011年より理化学研究所を兼務。2023年より日本学士院会員。研究分野は量子エレクトロニクス。I. I. Rabi Award、仁科記念賞、紫綬褒章、江崎玲於奈賞、ブレイクスルー賞など受賞。
演題時空のゆがみを見る時計 ―光格子時計が測る未来の時間―
この20年で大きく進歩した「光格子時計」は、従来の原子時計に比べて100倍以上の精度で時間を測ることができるようになりました。その驚異的な精度により、重力によって時間の進み方がわずかに変化するというアインシュタインの「相対論的効果」を測定することが可能となり、光格子時計は「時空のゆがみを見るセンサー」としても活躍します。私たちは、小型で持ち運び可能な光格子時計を開発し、わずか数センチの高さの違いによる時間のずれを観測する実験を行いました。本講演では、光格子時計の仕組みや最先端の実験成果を紹介しながら、今後この技術がどのように社会に応用されていくのか展望します。
開発した小型光格子時計。レーザー冷却された原子を光格子中に捕獲し、低温に冷却した恒温槽の中で時計遷移を高精度に分光する。