第22回 仁科芳雄博士生誕日記念科学講演会開催
平成26年12月5日(金) 里庄総合文化ホールフロイデ中ホールにて

山下 了 (やました さとる) 先生
東京大学素粒子物理国際研究センター 准教授

演題:「生まれたての宇宙を再現 -素粒子をつくり生まれたての宇宙を再現する研究の最前線-」

地元の中学生及び一般聴講者約350名を前にご講演いただきました。

講演概要
宇宙にはわからないことが沢山あります。とくに生まれたての宇宙は多くの謎に満ちています。この研究のために大活躍しているのが、仁科博士が日本のパイオニアである「加速器」という装置です。原子よりも小さな「素粒子」の世界を研究するために開発されたこの「加速器」は、その後社会生活で様々な形で利用され大活躍しています。宇宙と物質の研究では、生まれたての宇宙のその当時と同じような高温の世界を実験で再現することで、私達や星をつくる原子はどうやってできたのか、原子もまだできてない宇宙はどういうものだったのか、生まれてまだ一秒に満たない宇宙の様子も徐々にわかってきました。今では、世界の研究者が協力して、宇宙の隅々までぎっしりと詰まっているといわれる謎の「ヒッグス粒子」や、見えない物質「ダークマター」の正体解明に挑戦しています。今回は、この宇宙の始まりや物質の根源に迫る研究の最先端についてお話します。


講演の様子
「加速器」という実験装置によって、宇宙誕生直後の状態を再現して物質の根源の解明を目指す研究についてご講演いただきました。仁科博士が作ったサイクロトロンも加速器の一種です。加速器というと研究用の大型装置を思い浮かべますが、ブラウン管や電子顕微鏡、そしてコンピューターチップの製造や医療機器など、身近なところでも広く使われていることが紹介されました。

生まれてから1兆分の1秒後の宇宙の状態(温度にすると1京℃)を再現するため、ヨーロッパのCERN(セルン)にある世界最大の加速器LHCで行われている実験の様子を、加速器や測定器などの豊富な写真を交えつつ説明されました。さらに、山下先生が大きく関わっている次世代の加速器「ILC(国際リニアコライダー)」と、そこで調べる「ヒッグス粒子」や「ダークマター」についても、最後に少し話をされました。

中学生にはやや難しい内容ではあったようですが、山下先生はなるべく分かりやすくかみ砕いて説明してくださり、積極的に聴衆の中学生に話しかけている姿が印象的でした。生徒たちも興味を惹かれた様子で、講演の後の質問ではたくさんの手が挙がり、時間の都合上やむなく途中打ち切りとせざるを得ないほどでした。

山下先生のご研究をさらに知りたい方は、東京大学素粒子物理国際研究センター山下研究室のホームページをご覧下さい。


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