演題:時空のゆがみを見る時計 ―光格子時計が測る未来の時間―
講師 : 香取 秀俊(かとり ひでとし)先生
国立研究開発法人 理化学研究所
光量子工学研究センター 時空間エンジニアリング研究チーム チームリーダー
講演概要
この20年で大きく進歩した「光格子時計」は、従来の原子時計に比べて100倍以上の精度で時間を測ることができるようになりました。その驚異的な精度により、重力によって時間の進み方がわずかに変化するというアインシュタインの「相対論的効果」を測定することが可能となり、光格子時計は「時空のゆがみを見るセンサー」としても活躍します。私たちは、小型で持ち運び可能な光格子時計を開発し、わずか数センチの高さの違いによる時間のずれを観測する実験を行いました。本講演では、光格子時計の仕組みや最先端の実験成果を紹介しながら、今後この技術がどのように社会に応用されていくのか展望します。
講演の様子
大学の研究は挑戦しないことが最悪であり、失敗から新しい種を見つける姿勢が大切であるというお話から講演が始まりました。現在最も正確な時計は15桁の精度を持つ原子時計で、GPSや電波時計に広く応用されており、我々の生活に大いに役立っています。
先生が開発した「光格子時計」は、原子時計をはるかに上回る18桁という精度を誇り、宇宙誕生から動かしてもズレは1秒以下という驚異的な正確さです。この精度により、アインシュタインの相対性理論を応用し、わずか1メートルの高低差による重力の違いを測定する「高度センサー」が実現可能です。我々は歴史的な「原子時計の精度革命」に立ち会っているのです。
2030年には「秒の再定義」が予定されており、2026年から候補の絞り込みが始まります。かつてフランスがメートル法で世界をリードしたように、日本も光格子時計をソフトパワーとして戦略的に考えないといけないと力説されました。
光格子時計の開発者ならではの説得力に満ちた、未来への視野を広げるご講演でした。