演題:海底の電気で生きる微生物 環境、エネルギー、そして生命の起源へ
講師 : 中村 龍平(なかむら りゅうへい)先生
国立研究開発法人理化学研究所
環境資源科学研究センター
生体機能触媒研究チーム
チームリーダー
講演概要
私たちは毎日、植物が太陽光を浴びてできた作物を食べることでエネルギーを得ています。一方で太陽の届かない深海底にはエネルギー源がなく、生命の存在しない死の世界だと思われてきました。しかし、海底火山の周りには多くの生物がいることが40年ほど前に明らかになりました。さらに、海底火山は電気の流れを作り、電気を使って生きる微生物がいることも最近わかってきました。
太古の昔から海底には電気の流れがあったのに、人類がそれに気づいたのはごくごく最近です。そこから見えてくる、環境・エネルギー問題に向けて役立つ技術、さらには生命の起源。最前線の研究をご紹介します。
講演の様子
光が届かない海底の環境とそこで生きる生物の話から、それをヒントに環境・エネルギー問題への新たな可能性に挑戦する研究をご紹介いただきました。 私たちが思い浮かべる生物は光合成をする植物とそれを食べる動物、つまり太陽エネルギーによる「光の生態系」です。しかし、光が届かない海底では、地熱など地球内部のエネルギーによる「暗黒の生態系」が広がっていることが分かってきました。
そして海底の岩石には地熱を電気に変える熱電変換という能力があるそうです。海底の岩石は表面にマイクロ構造を持ち、このために電気を流すのに熱は流さないという変わった性質を持つからだそうです。さらに、最近は電気エネルギーで生きる微生物がいることが分かってきたそうです。生物にとって光エネルギーでも化学エネルギーでもない第3のエネルギー源があるということです。
これらの研究を通して、現在大きな課題となっている環境問題の解決策が見えてきます。そして資源がない国と思われている日本は海洋資源大国であるという力強いメッセージで講演が締めくくられました。