演題:合成化学で機能を創る
講師 : 瀧宮 和男(たきみや かずお)先生
国立研究開発法人理化学研究所
創発物性科学研究センター
創発分子機能研究チーム
チームリーダー
講演概要
私たちの身の回りにはいろいろな物があふれていて、それらはさまざまな材料で構成されています。化学は役に立つ材料や新しい材料を作り出すことができ、プラスチックから医薬品まで私たちの生活になくてはならない多くのものづくりに貢献しています。20世紀に大きく発展した有機合成化学は、21世紀に入りそれまで対象としていなかったエレクトロニクス分野にも重要な役割を果たすようになっています。本講演では、私たちの研究室で生み出されたさまざまな化合物を紹介しながら、それらのエレクトロニクスへの応用について紹介します。合成化学が材料科学のための強力なツールとなることを感じていただきたいと思います。
講演の様子
スマホ画面で使われ始めている有機ELや、今後私たちの生活を大きく変えると期待されている有機太陽電池や有機トランジスタの材料について、合成化学の観点からご講演いただきました。
有機化学というと複雑な化学式が出てくる難しいイメージがありますが、瀧宮先生は分子の3次元構造を見せるソフトを使ったり色々な化合物の実物を披露したりすることで、分かりやすくご紹介くださいました。分子が集まって機能を創る例として液晶を取り上げ、白く濁った液晶をドライヤーで熱すると透明になる様子を実演し観衆の興味を誘っていました。続いて、エレクトロニクスに応用される有機物はどのような構造を持っているのか、そしてどのように合成するのかを詳しくご説明くださいました。曲げられる柔らかい太陽電池が蛍光灯の光で発電する実演では、聴衆からどよめきが起こっていました。
最後に、今後の化学は持続的な社会の発展に貢献するというメッセージで講演が締めくくられました。