理化学研究所里庄セミナー

第17回 理化学研究所里庄セミナー

  • 平成20年8月23日(土)
  • 仁科会館
第17回 理化学研究所里庄セミナー
 仁科芳雄博士は、戦後の混乱期に財団法人理化学研究所第4代所長に就任しましたが、占領軍から理化学研究所解体の方針が出され、研究所は存続の危機を迎えました。博士の全力奔走により、理研発の技術の生産部門であった理研産業団(60余社)を切り離すことによって研究部門の存続にこぎ着けました。研究所は、財団法人から株式会社となり、博士は、㈱科学研究所となり、初代社長に就任しまた。㈱科学研究所はその後、特殊法人理化学研 究所を経て、独立行政法人理化学研究所となり今日に至っています。
 現在の理学研究所には、仁科博士のサイクロトロン研究を受け継ぐ「仁科加速器研究センター」が設けられるとともに、研究所の運営面でも、仁科博士の熱い思いが脈々と受け継がれています。
 里庄セミナーでは、物理学・生物科学・脳科学など、理研の各部門から2名の研究者のご来館を頂いておりますが、本年度は、仁科センター所属の若手研究者お二人から最前線の研究の一端をご披露いただきました。

演題:精密原子分光によるエキゾチックな原子核の研究

和田 道治先生
講師 : 和田 道治(わだ みちはる)先生

独立行政法人理化学研究所 
和光研究所基幹研究所
山崎原子物理研究室
専任研究員

講演概要

 太陽の光をプリズム分光器で観測すると七色に分かれます。その分光器の精度を上げると七色の中にいくつもの黒い線が観測され、それは太陽の大気の原子による吸収であることがわかりました。さらに精度をあげると観測できる超微細構造から、原子核のスピン(駒のような性質)が発見されました。このように、分光学の精度があがることによって新しい発見がなされ物理学が発展してきたのです。我々は、今日可能なもっとも高精度の分光技術を、普通には存在しないエキゾチックな原子核に適用して新しい発見を目指しています。

演題:原子核のチカラ:核力研究最前線“三体力”に迫る

関口 仁子先生
講師 : 関口 仁子(せきぐち きみこ)先生

独立行政法人理化学研究所 
和光研究所仁科加速器研究センター
本林重イオン原子核物理研究室
センター研究員

講演概要

 原子核の中で働くチカラ、核力は、湯川秀樹博士が提唱した中間子論により二つの核子(陽子と中性子の総称)の間を中間子という粒子が介在する“二体力”として理解されてきました。ところが湯川理論から70年を経った今、原子核の基本的な性質がこの二体力では説明できない事が明らかになり、新たなチカラ、三体力の存在が注目を浴びています。三体力とは第三の核子が二つの核子のそばに近づく事によって生じるチカラの事。ちょっと妖しい感じがしますね。今回、理化学研究所を中心に切り開いてきた核力研究の最前線“三体力”についてお話させて頂きます。

講演の様子

 会場には、中高校生60名はじめ若い世代を中心に一般市民の方が加わりホールいっぱいの120名の参加を頂きました。若い研究者お二人が、深い研究の内容を分かりやすく軽やかな語り口でお話しになり、それに頷きながら耳を傾ける高校生の皆さんの表情が大変印象的でした。短時間でしたが講演後の交流タイムも、研究生活の楽しみや素晴らしさが伝わる感動的なひとときとなりました。

理化学研究所里庄セミナー トップへ戻る

PAGE TOP