理化学研究所里庄セミナー

第20回 理化学研究所里庄セミナー

  • 平成23年8月20日
  • 仁科会館
第20回 理化学研究所里庄セミナー
 理化学研究所里庄セミナーは、現代物学の父であり、(財)理化学研究所第4代所長を務めた仁科芳雄博士の生誕地岡山県里庄町で毎年開催しています。今年で20回目となり、科学技術の振興をはかり、青少年に科学する心を育むとともに、最新の研究動向や成果を仁科会館より発信しています。

今年は、スパコン「京」の開発責任者、次世代スーパーコンピュータ開発実施本部 プロジェクトリーダ渡邊 貞博士と連続系場の理論チーム チームリーダ藏増 嘉信博士をお迎えしました。

セミナー参加者は、中・高生、企業、教育関係、研究機関あわせ131名の方が来場され最先端の研究、技術のお話を聴くことができました。

演題:スーパーコンピュータ -速さの秘密と応用分野-

渡邊 貞先生
講師 : 渡邊 貞(わたなべ ただし)先生

独立行政法人理化学研究所
次世代スーパーコンピュータ開発実施本部
プロジェクトリーダ

講演概要

 理論・実験と並ぶ第3の科学、計算科学。計算科学を支える基盤技術、それがスーパーコンピュータです。
 スーパーコンピュータを使った数値計算(数値シミュレーション)により、気候温暖化や宇宙の進化などの非常に長い時間の現象の解析や、衝突・燃焼、化学反応などの非常に短い時間の現象の解析、地震動の解析など、実験が不可能な事象の解析を行ったり、未来を予測したりすることが出来ます。このような数値シミュレーションを行うには超高速で計算を実行するスーパーコンピュータが必須の道具となっています。
 我が国ではスーパーコンピュータの技術は国家基幹技術と定められ、これを受けて2006年から文部科学省の主導の元に、理研を開発主体として10ペタフロップス(1秒間に1京回の計算)の計算速度を持つ、世界最速レベルのスーパーコンピュータ「京」の開発を進めているところです。
 本講演ではスーパーコンピュータの速さの秘密とその応用分野についてご紹介します。

講演の様子

 スパコン技術の世界は競争が激しくそれを勝ち抜き世界一になることが、日本の技術の根底となるものであり、地球温暖化等長い時間の解析や、化学反応などの非常に短い時間の解析、地震動の解析など、シミュレーションを行うには、超高速のスパコンが必要である。
 70年代から性能を高めるため研究者は何をしてきたか、何が必要か、応用分野は何かを紹介していだだきました。

演題:格子量子色力学(格子QCD)で探る素粒子の世界

藏増 嘉伸先生
講師 : 藏増 嘉伸(くらまし よしのぶ)先生

独立行政法人理化学研究所
計算科学研究機構 連続系場の理論研究チーム
チームリーダ

講演概要

 私たちが生きているこの世界は、重力、電磁気力、強い力、弱い力の4つの力によって支配されています。
 重力や電磁気力は私たちにとって馴染み深い力ですが、弱い力は日常身近に感じることはありません。
 強い力は、太陽や夜空の星を輝かせている源であり、私たちの体を構成しているさまざまな分子の中の原子核を構成している力でもあります。強い力を記述する理論は量子色力学と呼ばれ、その主役は物質の基本構成粒子(素粒子)であるクォークとグルーオンです。
 格子QCDの目的は時間1次元・空間3次元の時空間を離散化してQCDを格子上に定義し、最先端のスーパーコンピュータを用いて強い力の織り成す極微の世界のさまざまな物質形態を統一的に解明することにあります。
 本講演では、素粒子の世界の不思議とそれを究明しようとする基礎科学の面白さをお伝えしたいと思います。

講演の様子

 格子量子色力学は、量子論に基づいた量子化学の最先端であり、素粒子であるクオークの力学をやさしく解説していただきました。
内容は、1.科学における計算機の役割 2.素粒子物理学とは? 3.格子量子色力学
 謎が多い世界を解明するには、スパコンが重要な役割をしスパコン上で実験でも理論でも出来ないことをシミュレーションを行うことにより解明できる。
 印象に残っているのは、直感的に”面白い”と感じるものは発展性があるという先生のお言葉でした。

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