理化学研究所里庄セミナー

第26回 理化学研究所里庄セミナー

  • 平成29年8月19日(土)
  • 仁科会館 仁科記念ホール
第26回 理化学研究所里庄セミナー
 理化学研究所里庄セミナーは、仁科芳雄博士ゆかりの理化学研究所の研究者を招聘し、世界最先端の研究を一般の方々になるべく分かりやすくご講演いただいています。平成4年にスタートし今年で26回目となりました。今年は約100名の方が来場し、講演に耳を傾けました。

演題:生命システムを数理で解く

望月 敦史先生
講師 : 望月 敦史(もちづき あつし)先生

国立研究開発法人理化学研究所
望月理論生物学研究室
主任研究員

講演概要

 近年の生命科学の発展は目覚しく、我々の体づくりや恒常性の仕組み、あるいは病気になるメカニズムが、遺伝子の働きとして理解できるようになってきました。細胞の中には多数の遺伝子が存在し、それらが相互作用の複雑なネットワークを作っていること、遺伝子全体の活性のダイナミクスが、生物らしい振る舞いの起源であることが、しだいに分かってきました。このような複雑で動的なシステムを解明するため、従来の実験的方法だけではなく、数学や計算機を用いる理論的な方法が、新しい生命科学として期待されています。本講演では、数理的な方法が生命現象の理解にいかに役立つか、具体的な例を交えて紹介します。

講演の様子

 生物を数学で理解するという新しい研究について大変明快にご講演いただきました。生き物はとても複雑なので、数学や計算機を使って理論的に理解するのは難しいと思われていましたが、望月先生はそこに挑戦する新しい研究を切り拓いています。
 まず、魚の網膜の話をされました。網膜は3種類ある網膜細胞が規則正しく並んでおり、そのパターンは細胞間の接着力で決まることを、計算機を使って明らかにしました。接着力はまだ実験で分かっておらず、ゼブラフィッシュが持つ網膜細胞パターンになるための条件を、理論的に導いたとのことです。次に化学反応ネットワークの例として、糖からエネルギーを得る「中心代謝系」を取り上げ、一部の反応が止まってもその影響は部分的なものに限られ全体には広がらないという事が、数理モデルによる解析で分かったそうです。多少の事には動じない生物の強さの一端が理論的に示され、非常に興味深い話でした。

演題:元素の起源と変換

櫻井 博儀先生
講師 : 櫻井 博儀(さくらい ひろよし)先生

国立研究開発法人理化学研究所
仁科加速器研究センター
櫻井RI物理研究室
主任研究員

講演概要

ニホニウム元素の発見や、原子核がとくに安定になる「魔法数」の発見など、世界最高性能の理研加速器施設「RIビームファクトリー」は、世界を驚かせる成果を次々と挙げています。私たちの身体を形づくり、また身の回りに存在している全ての物質は、ビッグバン以来の宇宙のさまざまな営みによってつくられた元素から成り立っています。本講演では宇宙において元素がいかにして生まれたかという謎の解明や、原子核の成り立ちの理解に向けた研究について、その歴史やRIビームファクトリーで行われた最近の成果に触れながら、わかりやすくお話しいたします。また、核廃棄物の軽減にむけた元素変換技術についてもその展望を紹介いたします。

講演の様子

 元素の合成と変換について非常にかみ砕いた分かりやすいご講演でした。仁科博士について小学生の時に本を読んで知ったそうで、仁科博士は徹夜のプロで立ちながら寝ることができると書いてあったそうです。
 まず、元素と原子、原子核について話をされ、元素の合成とは原子核の変換であるという説明がありました。水素とヘリウム以外の元素は星が作ったのですが、その中でも鉄より重い元素は星の最後である超新星爆発で大量に作られたそうです。そして、鉄より重い元素がどのようにできたのかが理研のRIビームファクトリー(RIBF)の実験でかなり分かってきたそうです。ですが、金やプラチナなどのとても重い元素の起源はまだ分かっておらず、RIBFを改造して今年から実験を始めるとのことです。最後に、核廃棄物を減らすための元素変換プロジェクトに参加し、RIBFで取り始めているデータについての話がありました。

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