演題:サイクロトロンが切り拓く未来
講師 : 奥野 広樹(おくの ひろき)先生
国立研究開発法人理化学研究所
仁科加速器科学研究センター
加速器基盤研究部 副部長
加速器基盤研究部 加速器高度化チーム チームリーダー
加速器基盤研究部 低温技術チーム チームリーダー
核変換技術研究開発室 室長
講演概要
仁科芳雄博士は、1932年にサイクロトロンが発明されてから僅か5年後に、日本初のサイクロトロンを完成させました。当時、仁科博士は、日本の物理研究の未来を切り拓くためには、サイクロトロンの様な加速器が必要不可欠であることを強く思っていました。実際この1号サイクロトロンは、数多くの重要かつ新しい研究成果をもたらしました。理研では、この仁科博士の志を継いだサイクロトロンが更に8基建設され、その内の5基は現在も世界最高性能を誇る原子核加速器施設「理研RIビームファクトリー」で稼働しています。本講演では、理研のサイクロトロンの歴史とともに、現代の加速器技術と科学の発展をたどります。さらに今後取り組むべき加速器の課題を皆様と共に考えていきたいと思います。
講演の様子
「今日、一つだけ覚えてほしいのは、サイクロトロンは掃除機ではないという事です。」という言葉で講演が始まりました。サイクロトロンは粒子加速器の一種で、加速の原理を解説されました。
次に仁科博士に始まる理研のサイクロトロンの歴史の話がありました。仁科博士の死後に初めて製造された3号機は、1号機と同型ですが性能を上げるために様々な工夫を凝らしており、当時は部品や工具も理研で作っていたそうです。9号機SRCは世界最高のビームエネルギーで、欧米の人たちが製造を諦めたほどの困難を賢い設計と日本の技術力で乗り越えたそうです。SRCの色は奥野先生が決め、桜色にしたかったのが紫色になった結果、エヴァ色とも呼ばれる特徴的な色になったそうです。
サイクロトロンは医療応用も盛んで、陽子線、BNCT、重粒子線による治療やPET診断に数多く使われているそうです。
これからの話として、原子力発電の最大の問題である高レベル放射性廃棄物を加速器を用いて低減し資源化する取り組みを紹介されました。