理化学研究所里庄セミナー

第31回 理化学研究所里庄セミナー

  • 令和7年8月23日(土)
  • 仁科会館 仁科記念ホール
第31回 理化学研究所里庄セミナー
 理化学研究所里庄セミナーは、仁科芳雄博士ゆかりの理化学研究所の研究者を招聘し、世界最先端の研究を一般の方々になるべく分かりやすくご講演いただいています。平成4年に開始し今年で31回目となりました。今年は約110名の方が来場し、講演に耳を傾けました。

演題:時空のゆがみを見る時計 ―光格子時計が測る未来の時間―

香取 秀俊先生
講師 : 香取 秀俊(かとり ひでとし)先生

国立研究開発法人 理化学研究所
光量子工学研究センター 時空間エンジニアリング研究チーム チームリーダー

講演概要

 この20年で大きく進歩した「光格子時計」は、従来の原子時計に比べて100倍以上の精度で時間を測ることができるようになりました。その驚異的な精度により、重力によって時間の進み方がわずかに変化するというアインシュタインの「相対論的効果」を測定することが可能となり、光格子時計は「時空のゆがみを見るセンサー」としても活躍します。私たちは、小型で持ち運び可能な光格子時計を開発し、わずか数センチの高さの違いによる時間のずれを観測する実験を行いました。本講演では、光格子時計の仕組みや最先端の実験成果を紹介しながら、今後この技術がどのように社会に応用されていくのか展望します。

講演の様子

 大学の研究は挑戦しないことが最悪であり、失敗から新しい種を見つける姿勢が大切であるというお話から講演が始まりました。現在最も正確な時計は15桁の精度を持つ原子時計で、GPSや電波時計に広く応用されており、我々の生活に大いに役立っています。
 先生が開発した「光格子時計」は、原子時計をはるかに上回る18桁という精度を誇り、宇宙誕生から動かしてもズレは1秒以下という驚異的な正確さです。この精度により、アインシュタインの相対性理論を応用し、わずか1メートルの高低差による重力の違いを測定する「高度センサー」が実現可能です。我々は歴史的な「原子時計の精度革命」に立ち会っているのです。
 2030年には「秒の再定義」が予定されており、2026年から候補の絞り込みが始まります。かつてフランスがメートル法で世界をリードしたように、日本も光格子時計をソフトパワーとして戦略的に考えないといけないと力説されました。
 光格子時計の開発者ならではの説得力に満ちた、未来への視野を広げるご講演でした。

演題:虹と原子核のはなし

木村 真明先生
講師 : 木村 真明(きむら まさあき)先生

国立研究開発法人 理化学研究所
仁科加速器科学研究センター 核子多体論研究室 室長

講演概要

 空にかかる美しい虹。なぜ虹は七色に輝くのでしょうか? 虹の向こう側には行けるのでしょうか? そんな素朴な疑問から出発し、虹のひみつ、そして科学者ニュートンが「予言」した虹についてもご紹介します。さらに話は意外な展開へ。実は虹は、空だけでなく、目に見えない原子核の世界にも現れます。なぜ原子核に虹が現れるのか? また、“虹”は、原子核について何を教えてくれるのか。空と原子核、二つのスケールを超えて虹がつなぐ世界を、わかりやすくお話しします。

講演の様子

 講演は、まず我々が普段見ている虹の話から始まりました。虹は太陽と反対側に出ること、2本以上現れ2本目の虹は1本目より暗いこと、そして2本の虹の間が暗くなる「アレキサンダーの暗帯」など、普段見ているにも関わらず見落としがちな特徴を含め説明されました。そして、これらの虹の特徴が光の屈折や反射によって明快に説明できることを丁寧に解説されました。さらに、光が波であるために起きる「光冠」という現象についても紹介されました。
 実は、ミクロな世界である原子核にも虹が現れるという話に展開されます。原子核の世界を表す方程式は光の方程式とほぼ同じであるため、同様の現象が起きるとの事です。酸素の原子核同士を衝突させた実験データでは、前方に光冠、後方に虹と同じ現象が捉えられており、これらは原子核の構造や働く力を反映しているそうです。
 身近な空の世界と原子核の世界が、同様の物理法則に基づいて「虹」という現象でつながっているという非常に興味深い話でした。

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