第23回 仁科芳雄博士生誕日記念科学講演会開催
平成27年12月4日(金) 里庄総合文化ホールフロイデ中ホールにて

長沼 毅 (ながぬま たけし) 先生
広島大学(生物圏科学研究科/生物生産学部)教授

演題:「謎の深海生物から宇宙生命をさぐる」

地元の中学生及び一般聴講者約350名を前にご講演いただきました。

講演概要
 まっくらな深海には変な生きものが多いですね。その中でもとびっきり変なのは「チューブワーム」でしょう。海底火山などに生息するチューブワームは、まるで「食べることをやめた」かのようですが、植物ではなく、れっきとした動物です。「動物はものを食べるもの」という常識がひっくり返ったのです。
 その変な生き方の秘密は火山ガスにありました。火山ガスをエネルギー源として自分で栄養分をつくる不思議な微生物(バクテリア)がいます。チューブワームはそのバクテリアを体の中に飼っていて、チューブワームが吸った火山ガスをバクテリアにあげて、バクテリアから栄養をもらうのです。これを「共生」といいます。
 光もいらない、食べものも要らない。海底火山があって共生バクテリアがいればいい。いま、地球以外にも、海底火山のありそうな天体(ほし)が見つかっています。そこにはチューブワームのような生物がいるでしょうか?!


講演の様子
深海・南極・宇宙、そしてそこに住む生物と、非常に多岐にわたる話が縦横無尽に展開され、宇宙生命の可能性を示したインパクトあふれるご講演でした。

まず、長沼先生が深く関わる福島県南相馬市と仁科芳雄博士との縁から話が始まりました。1921年に完成した原町無線塔で使われていた部品が仁科博士のサイクロトロンに転用されたそうです。

次に、海底火山に住む「チューブワーム」というとびきり変わった生き物について説明されました。食べ物がいらない、太陽の光もいらない、海底火山があれば生きていける動物です。そのメカニズムは火山ガスをエネルギーに変える微生物と共生することだそうです。

そして、木星の第二衛星エウロパにも海底火山があることから「エウロパにチューブワームはいるだろうか」と問いかけます。エウロパの海底火山は厚い氷に覆われているのですが、地球の南極大陸にも厚さ4000メートルの氷床の下に湖があり、数年前にロシアの研究者がこの氷床を掘り抜いたそうです。またエウロパの海は日本が誇る潜水調査船「しんかい6500」で探索できること、「しんかい6500」はスペースシャトルで運搬できることから、エウロパの海底火山で生物を探すことは可能であるということです。

また、ご自身の宇宙飛行士選抜試験での話から「夢をかなえるには時間がかかる」ことや、南極基地でのサバイバル経験から「国際協力では英語が重要である」ことなど、印象深いエピソードで中学生にメッセージを送ってくださいました。


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